十中一句 ~赤坂暮らし~

赤坂に似合わない赤坂の住人。独自の視点からもののあはれを書き綴ります。

マルエツ プチ

 何度も買い物しているのに、”maruetsu” のサインしか目に入っていなかったため、マルエツさんだとは気づいていなかった。今日は雨の赤坂を傘もささずに……ではなく、しっかり傘をさしてシャッターを切る。

マルエツ プチ 赤坂店


 ここは親切な店員さんが複数いる。自然に話しかけてくれたり、忙しい時間で作業も大変だろうに、笑顔で話しかけてくれたりする。だが私の今日のお目当ては、吹雪まんじゅう。撮るのを忘れて食べてしまった。風味の良い、北海道小豆のつぶつぶ感が楽しめるあんこがたっぷり入っている。あんこはかくあるべし。緑茶とともに、至福の時間。

ドイツパン

 どこか、とはいえないが、近年強烈にまずいパンを作るパン屋に出会った。パンだけに限らず、生まれてこの方食べたことのないまずさで、4種類4個買ったが、最初の一個のひとくちで、ノックアウトされた。

 チョココロネ、レバーの入ったサンドイッチ、あと2種類は何を買ったのかも記憶を失ったし、そもそも肝心の自分が唯一口にしたパンの形状も味も覚えていない。そのくらい恐ろしい体験だった。

 私はパンに対するこだわりが強く、自分で酵母から起こし、粉も使い分けて焼いてきた。 もちろん、ドイツパンを食べたのも初めてではない。この店をみつけたときは、小躍りしたくなったが、飲食店評価サイトのある口コミが気になってはいた。旨いとも不味いとも書いておらず、「ドイツパンとはこういうものなのかもしれないが」「自分の口には合わない」というような表現があったのだ。

 なんとも、チャレンジ精神を掻き立てるではないか。そうか、では私がドイツの食文化に挑んでやろう、というような気持ちにもなったような気がする。

 店は、大通りから入ったところにあり、老舗感を堂々と漂わせながら佇んでいた。窓の外から店内を眺めると、パンや焼き菓子が並んでいる。どこか、絵本の中の一場面とか、夢の中の一場面とか、ミニチュアのセットを見ているような感覚に陥る。「ごめんください」と声をかけて、誰もいない店内に恐る恐る入ってみた。棚に平置きで「クロワッサン」がある。小さい短冊状の紙にもそう書いてあるが、トラ状に模様が入ったような見た目で、カニっぽい形状以外、クロワッサンらしさがみじんも感じられない。「嘘だろう?」と心の中でつぶやいた。

 ここまでくれば、対象物を購入して帰ったところで、それらが実はほっぺたが落ちるほどおいしい!という奇跡が起きるはずなどないことは人生経験上わかっている。しかし老婦人が接客のため出てきてしまった今、買わずに引き返すのは自分の心理的に無理だ。なぜか私は、一層得体のしれない世界を味わってしまいそうなレバーとチーズ?のサンドイッチに手を出した。

 袋を抱えて職場に行き、包みを開いていずれかのパンをかじり、私の動きは止まった。それ以上噛むことができない。やっとの思いで飲み込むと、好奇心旺盛な同僚たちが試食し始めた。結果、2個のパンはほぼ手つかずに近い形でさよならとなった。

 強烈なまずさの理由は、おそらく古い粉。ドイツパンだからまずいなんてことがあるわけない。パン屋を営むならせめて、酵母と粉と、食べてくれる人への愛を忘れないでほしい。

春秋でランチ

 今日は山王パークタワー春秋でランチをいただいた。カットしたトマト、ナスの煮つけ、カボチャのロースト、大根の煮つけ、インゲンのフライなどなど。野菜と総菜のブッフェである。菜食主義者というわけではないが、どちらかというと肉や魚より野菜が好きな私にとっては、素晴らしいランチだ。

上品な味わい


  春秋は、なんといっても味付けがいい。濃すぎず薄すぎず、スパイスをうまく使って、塩分を抑える工夫が黙っていても感じられる。少なくとも週一で食べたい。などと、同店で昼のブッフェしか食べたことのない私が何を言うか?であるが、許してほしい。

 

景観


 今日は日よけのためか、布製のブラインドが下ろされていた。ガラス越しにも強く感じられる日光だったから仕方がないかもしれないが、残念。せっかく27階なのに、と思ってしまう。

 それにしても1200円でたらふく野菜が食べられるのだから、総合して文句なしである。私の本日の特記事項は、ランチだけであった。おいおい、ミッドタウンに早く行って何か情報を知らせよ、とか思う人もあるかもしれない(いや、始めたばかりのブログに見知らぬ人のアクセスなどない)が、実はミッドタウンはとっくに行っている。港区のバイクシェアだって使ってる。しかし、いずれも書くのは追々である。

もうやんカレー

 行きたいけど行けない。惹かれつつも、ネーミングと書体に怪しさを感じ、いまだ行くことができていないこのお店。多店舗展開しているようだが私は赤坂で初めて知った。検索してみると、「もうやん」は社長のあだ名という話が載っていたが、明確なソースがみつからないので私としては保留だ。少なくとも、もういやん♪の意味ではなかった模様で、その点は少し安心した。

 それにしても書体だ。どうしてこんな脱力系なのか。 ふざけているようにも見えるのだが、やや腹立たしいくらい気になり目が行く。あざとさなのか天然なのか境界線が引けず、いたいけな〇十代の心に「行きたい行けない」の葛藤を生む。

 はて、赤坂店のほかにはどこにあるのだろう?店舗一覧を開いてみる。一番上にあるのが「利瓶具」。西新宿にそんな地名があるのか?と血迷い、Googleマップで探してみたら、やられた。もうやんカレーが出てきた。

 次はというと「大忍具」 だ。ちょっとイライラしてきたがわかった。diningと言いたいのだ。続いて「池」。池袋店のことのようだが、「いらっしゃいませ」の文字が本気でふざけている。新橋店からは地名そのものが付与されて、京橋店に来たらこれである。「ねっとりとろとろ 京橋オリジナルテイスト アボカドカレー」一体どういう悪戯心があると、こんなビジュアルのメニューを思いつき、さらには提供しようと考えるのか。

 まったくもういやん。である。ここまで葛藤した以上、そう簡単に行くもんか。とはいえ、野菜と果物を炒めまくってジャムにしたものがルーのベースというのだから、食べないわけにはいかないとも思っている。

蜂蜜部屋

癒しのとき


 がらんとしたマンションの一室であるが、疲れて帰るたびに私の部屋には常に甘い香りが漂っている。鯛焼きや甘栗の香りであれば、四六時中嗅いでいることに苦痛を覚えるかもしれないし、はちみつ臭もズバリ蜂蜜の匂いなら飽きてしまうことだろう。でもこの部屋の匂いは違う。どんな体調で帰ってきても、ホッとする。

カウチポテト 


 昔でいうところのそんな感じで時間を過ごす。だがカウチもなければ一緒にポテトチップスをぱりぱりいわせる相手もない。マヨネーズおかきと熱々の知覧茶を脇に置き、リノリウムの上にベタっと座って、昨夜はTBSで『大恋愛』を観た。ふと、何のために観ているんだろう?と思わないでもなかったが、間宮真司ことムロツヨシさんと恋人の尚(戸田恵梨香さん)のやりとりを眺めながらふと、言葉を紡ぎ「書くということ」の尊さを思い出した。自分の琴線がそこにある。

蜜蝋


 「密猟」ではなく、「みつろう」である。この部屋にある唯一の家具らしきものが木製机で、職人さんが丁寧に塗り込んでくれたようだ。1年経っても甘すぎず嫌味もない素敵な蜜の香りが毎日私を迎えてくれる。唯一、赤坂らしい贅沢さを錯覚する瞬間だ。ただいま、ミツロウ。

夜景

 多分、赤坂で生活を楽しむには、私の数倍の収入が必要だろう。だが私はここにいる。楽しむためではなく、奉仕するためにこの地に来たからだろう。奉仕……そんな言葉が自分の口から出るのは似合わないことは知っている。金持ちでもなければ、官僚でもなく政治家でもなく起業家でもない。情報屋でもなければフィクサーでもない。
 
 道を歩けば、大臣や副大臣、(自分の)地元政治家を目にすることも多い。そんなとき、政治姿勢で相手を値踏みすることはほとんどないのが自分でもやや不思議だ。見ているのは表情。挨拶をしたときの反応。週刊誌報道でバッシングを受けた現役・元議員でも、通りすがりの一人として「こんにちは」とあいさつしたときに、意外にも人懐こくやさしい反応の政治家が少なくないことは、いとおかし。

 形から入るほうではないのだが、道路を渡ろうとしたときも高級車がすっと止まってくれる。買い物をしていても、押しのけてくるような人はいない。道路ですれ違うときに、こちらを目指してぶつかってくるような人もまずいない。身のこなしのきれいな人が多い、赤坂が私は好きだ。
 

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